様々な検査により病気の種類を特定し、それに見合った適切な治療をするのは当然のことです。ただ一概に皮膚病と言っても様々な種類があり、しかも複合しているケースも多く認められます。また、来院される頃には時間が経過しており初発時の症状から変化しており原因が特定しにくいケースもあります。そのため難治性の皮膚病については根気良く治療を続けることが必要になります。
またアレルギー性の皮膚病では100%根治することが難しいことが多く、生涯に渡り日々の生活に支障がないよう良好な状態にコントロールできる治療が目標になります。
当院での治療法を皮膚病の中で最もよく遭遇するアトピー性皮膚炎を主に例にとってみますと、以下のように集約されます(他の皮膚病にも共通した有効な治療項目は含まれます)。
残念ながら今までアレルギー性の痒み、炎症などの症状をほぼ完全に抑える治療薬は副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)以外にありませんでした。しかしこの方法は根治療法ではなくあくまで対症療法であること、また長期間の投薬により副作用が発現するおそれがあります。ですから当院では症状を抑えるためのステロイドの投薬量を出来る限り少なくするように心がけております。そのため当院独自の複合処方(抗生物質や安全性の高い抗アレルギー剤など数種の薬剤との併用)及び適切な投薬スケジュールに基づいた治療を行っております。
2016年7月より国内で初めて導入された内用薬です。アレルギーの痒み、炎症を惹き起こす物質(サイトカイン)の伝達経路を選択的に阻害し、免疫系への影響は最小限に症状を早期に緩和します。ステロイドとはまったく別の薬剤なのでステロイド特有の副作用の心配がほとんどないと言われております。効果については当院で使用したケースにおいてはおおむね高いと判断しております。欠点としては比較的高価な薬剤に属するということです。それと新薬なので1年以上使用し続けた場合のエビデンスが十分には出ていないという点です。
イヌインターフェロンを週に一回、約2ヶ月間、皮下注射する方法です。
これによりバランスを失った免疫機能を整え症状を緩和(体質改善)する治療法です。治療による副作用の心配がほとんどなく安全性が高いことが最大のメリットになります(猫には使用できません)。有効率がステロイド療法に比べて低いのがデメリットですが症状の軽い場合にはステロイドの休薬や投与量を減らせるケースがありますので意義のある治療法の一つだと考えております。
シクロスポリンが有効成分となっており免疫系に作用し、様々なアレルギー反応を抑制し症状を緩和すると考えられています。最初1日1回約4週間内服して効果が認められた場合はその後、投与回数を減らすことが可能です。人体と違って長期投与による重篤な副作用が少ない(一過性の軽度な消化器症状などは認められている)と言われています。
欠点としては有効性がステロイドほど高くなく、必ずしもこの薬剤単独で症状をコントロールできるわけではないということです(併用することでステロイドの投与量を減らすことは可能)。それとあくまで対症療法なので基本的に生涯投薬を続けなければならないこと、比較的高価な薬なので経済的負担が大きいという欠点があります。犬用しかありませんでしたが現在は猫用も製品化されています。
感作アレルゲンを少量ずつ長期間にわたり投与することにより、アレルゲン特異的な免疫反応を減弱させる治療法です。今まではアレルゲンの入手法が煩雑であったり副作用の心配があることなどによりそれほど普及していませんでした。
しかし現在は副作用が少なく有効性の向上が期待できる減感作療法薬が国内で製品化されており投与回数も週1回、計6回という利用しやすい環境が整ってきました。ただしチリダニ(ハウスダストマイト)の感作が認められるアトピー性皮膚炎の犬が治療対象なので事前に血液検査することが必要になります。
薬用シャンプーによる洗浄も一種の外用療法と言えます。皮膚の細菌感染の軽減や体表に付着したアレルゲン物質の清浄化につながり有効です。症状にあわせて適切な薬用シャンプーを使用します。
ステロイド剤配合の外用薬は部分的に生じたアレルギー性炎症だけを抑えたい場合に局所的に使用すると効果的です。内用薬のように全身に作用するわけではないので副作用がでにくいメリットがあります。
シャンプー後の保湿コンディショナーや滴下式保湿剤などは皮膚の乾燥を防ぎ皮膚のバリア機構の正常化を促して治療効果を増強します。
現在数多くのアレルギーに効果があると称されるサプリメントが販売されています。有効性はケースバイケースで限られると思いますが、内用薬と併用することで効果がある場合があります。症状が軽度の場合には単独で効果をあげているケースもあります。個体差もありますのでどれが1番というわけにはいきませんが、その時点で効果に関するエビデンスのしっかりしているものに絞って使用しています。
マイクロバブルとは数十マイクロメーター以下の超微細な泡のことです。そのマイクロバブルとオリジナルクリーナーとが溶け合い、皮膚や被毛そして毛穴の奥まで入り込み、汚れを浮かせて剥がし取ります。一般のシャンプー洗浄のように皮膚を擦ることがないので皮膚刺激が少ないことがメリットになります。
現在これにオプションとして保湿、防虫、抗菌効果がある天然ヒバオイル主成分のモイスチャープラスという入浴剤を加えて使用することができます。
アトピー性皮膚炎とは意味合いが違ってきますが食物アレルギーを伴っているケースでは処方食の役割も重要になります。
様々なアレルギーの原因になりにくい原料から作られている専用フードが各社より数多く発売されています。個々のアレルギー原因物質が限りなく除去されている処方食があれば最低1-2ヶ月継続して与えると症状が軽くなる場合があります。ただし処方食と水以外は一切他の食物を与えないことが必要です。血液検査によりどのような種類の処方食が適合するのかを前もって絞ることができます。
一般的に皮膚病の治療というのは、各種治療法が複合的に必要なことが多く、どれか一つが万能の治療法というわけにはいきません。症状に応じで総合的な治療が必要だと考えております。
例えばアトピー性皮膚炎を例にとりますとステロイド中心の内用薬による治療法がメインだとしても他の治療を併用することでステロイドの投与量を出来る限り少なくすることが重要だと考えております。
※皮膚病についてのご相談は、当院へお気軽にお問い合わせください。